絵本

〜幸せの宝箱〜

ポポット町3番地7町目にある、くまのお花屋さんのお話です。
今日も双子のくまの兄弟、オリーブ君とローズちゃんが力を合わせて仲良く働いています。
なんだかとっても楽しそうな話声が聞こえてきます。
「ねえ、オリーブくん、私とあの子どちらが魅力的だと思う?」
「それは凄く難しい質問だね!!どちらもとっても素敵で順番なんかつけられないな。」
「そうね!私も綺麗だけど、あのこもとっても可愛いと思うわ!毎日お手入れしてくれてありがとう」
「ローズちゃん、このリボンとっても気に入ったわ。私にぴったりよ!ローズちゃんのセンスはとっても抜群ね」
「喜んでもらえて良かった!本当によく似合うわ」
オリーブくんと、ローズちゃん以外にも沢山の声がしますね!お店のオープン前のはずですが、いったい誰と話ているのでしょうか?
実は、ふたりはお花達と話をする事ができるんです。お客さんには絶対内緒にしておいてくださいね!びっくりしてしましますから!
「いらっしゃいませ。」
おっと!お客様のようですね。

「ご来店ありがとうございます。遠い所から来てくださったのですか。」
大きなリュックを背負った、旅人のお客さんです。
「そうですね。すごく遠くから来た気もするし、少しだけ遠くから来た気もします。ただ長い間旅をしています。」
「それはご苦労様です。今日はどんなお花をお探しですか?」
「私はずっとある物を探しているんですが。こちらにあるでしょうか?宝箱なんです。」
「宝箱ですか?このお店を始めてから見かけたことはないですが、もしかしたら、倉庫の中にあるのかもしれません。探してみましょう。どんな宝箱ですか?」
「それが、持っていた宝の地図を無くしてしまいまして。どんな宝箱だったのか、思い出せないのです。確かなのは、その中には幸せになる為に必要な最高に素晴らしい物が入っていると言う事です。きっと、金銀や宝石などの財宝が詰まっているに違いありません。私の妻と子供が、その宝箱を持って帰って来るのを、首を長くして待っているんです。」
「ご家族が待っていらっしゃるんですね。それでは、一刻も早く見つけて帰らなくてはいけませんね。」
お店の中に、ザワザワと話し声が広がり始めました。
話を聞いていたお花たちが口々に何か言っています。
「素晴らしい物なら、僕が持っているよ。」「私も持ってるわ。」
そうそう、このくまの兄弟は、お花達と話ができるんでしたね!
オリーブ君はある事をひらめきました。
「ねぇローズ、お花たちが旅人さんの家族に幸せを運んでくれるんじゃないかな?」
「流石オリーブ!絶対にそうだと思うわ」
そして旅人に言ったのです。
「旅人さん。その宝箱はきっと見つかりますよ。明日の朝、それを取りに来てください。」
「ほんとうですか?では、明日またお伺いします。」
旅人が帰った後、2人は宝箱を作り始めました。
だって、幸せになる為の1番素晴らしい物が何かを2人は知っていたからです。

宝箱を用意して、その中に、色とりどりのお花を詰めました。
この花屋さんの花達はそれぞれに素晴らしい力を持っています。
愛し合うこと、一緒に過ごすこと、信頼すること、感謝すること、許すこと、平和にすること、思いやること。
家族にとって、とっても大切なことを沢山詰めました。
くまの兄弟は旅人の事を思いながら、一生懸命に心を込めて素敵にお花を飾りました。
次の日の朝、旅人がお店を訪れました。
そして、その宝箱をあけました。旅人の目からポロポロ涙が溢れました。
「これは、私が探していた宝箱です!本当に素晴らしい物だ!!急いで家族の元に帰らなくては!」
旅人は2人にお礼を言うと、大急ぎで帰って行きました。

しばらくして、旅人から手紙が届きました。
『くまのお花やさんへ』
親愛なるオリーブ君、ローズちゃん
私の探していた宝箱を見つけてくれてありがとう。おかげで、家族の元に帰ることができました。
そういえば、私が宝箱を探すようになった訳を伝えていませんでした。
私はずっと家族を幸せにしたいと思っていました。
ある時、町の大富豪が遺言書と共に宝の地図を残して亡くなりました。
その遺言書には。「私が生きる中で見つけた、最も重要で素晴らしい宝を隠した。それを見つけた物は幸せを手にするだろう。」と書いてありました。
私はきっと、大富豪がもっいる物の中で、いちばん高価な財宝が入っていると思いました。
それを見つけて家族と裕福に暮らして幸せになろうと考えたのです。
そうして宝箱を探す旅に出かけました。
しかし私が旅に出ている間、妻と子供とは離れ離れで、寂しい思いをさせてしましました。
私はてっきり、家族は宝箱を楽しみに待っているだろうと思っていましたが、それよりも私の帰りを心待ちにしていたのだと知りました。
驚きと嬉しさで胸がいっぱいになりました。
家族みんなで宝箱をあけました。
幸せになる為に一番大切な事は、どこか別のところにあるのではなくて、私たち自身の中にあったのだと言う事に気づく事ができました。
最高に幸せです。
本当にありがとう。
手紙と一緒に旅人さんの家族の写真が入っていました。
みんな笑っていて本当に素敵な写真でした。ふたりは嬉しくなって、その写真をお店に飾りました。
くまのお花屋さんに笑顔の花が咲きました。